ブリッジウォーター・アソシエイツのカレン・カーニオルタンブール氏が、現株価に織り込まれている、適正なリスクプレミアムを与えるのに必要なEPS成長率を計算している。
株価からその企業がどれだけ期待されているかを正確に知る手段はないが、私たちが見出した役に立つ方法は、現在の株価とEPSから、債券を超える通常のリターン(3%)を生み出す将来のEPS水準を導き出すことだ。
国債より約3%上回るリターンを上げられないなら、投資家は取っている追加的リスクに見合う報酬を得ていないことになる。
カーニオルタンブール氏が投資家向けメールで、市場が織り込む将来の利益成長について試算している。
株式リスクプレミアムの通常値を3%と見て、それを実現するために必要な将来のEPS成長率を計算したもののようだ。
同氏は5つのグラフを提示し、現在の世界の株式市場を俯瞰している。
グラフでは《過去10年のEPS成長の実績》と《通常のリスクプレミアムを稼ぐのに必要な将来のEPS成長》が描かれ、いろいろな比較がされている。
- 米国とそれ以外: 織り込まれた成長率は米国9%、それ以外2.5%
- テック株: テック以外より高い成長率が織り込まれているが、テック内でのAI関連とそれ以外では僅差(AI関連よりテック全体の方がわずかに高い)
- マグニフィセント7: 過去10年の成長率30%に対し、今後は12%成長が織り込まれている(それでも他のS&P 500銘柄より高い)
- 新興国市場: インドで高い成長率が織り込まれているが、それ以外ではゼロ成長でも株価は正当化される
- 関税で有利・不利な銘柄: 現時点では織り込むEPS成長率の差は1%未満。ただし政策次第
総じて言うなら
- 米市場、テック株、Mag7では高い成長が要求されている
- 市場は、AIや関税の要因をさほど織り込んでいない
- インド以外の新興国市場では、ほとんどEPS成長を見ていない
だろうか。
こうした知見からカーニオルタンブール氏は次のようにアドバイスしている:
他の国々の株式に分散すれば、はるかに良好なリスク/リターンを実現できるにもかかわらず、投資先について投資家は米国にとても集中している。
現在、分散は基本的にフリーランチになっている。
米国株市場では、AIや保護主義への移行が大きな要因となると考えるなら、そうした移行の恩恵を受ける株式を買うことで利益を得るチャンスがある。
1文目は、割高な米国株だけでなく、割安な外国株に投資することで、コストなくポートフォリオの分散が図れる、ということだろう。
2文目は、AIや保護主義で恩恵を受けると言われている銘柄が本当に恩恵を受けると思うなら賭けるといい、ということだろう。
(もっとも後者については、AIや保護主義による恩恵について市場が楽観し過ぎていたと考える人が多いから、こうした計算になっているのだろう。)