アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏が、ビットコイン投資での失敗(?)やビル・グロス氏から学んだことを語っている。
あれは投資における典型的な間違った行動だった。
20,000ドルが私にとってある種のアンカーになっていて、20,000ドルで売ってしまった。
エラリアン氏がWalker & Dunlopのインタビューで、ビットコイン売買にかかわる失敗談(?)を語った。
大きく儲けた話なのだが、もっと儲かったはずという話だ。
そもそも同氏がさほど評価していなかったビットコインを買ったのは、コメンテーターとしての言動に責任を持つためだった。
簡単に経緯を説明すると:
年月 | BTC/USD | エラリアン氏の言動 |
---|---|---|
2017年9月 | 4000ドル前後 | ビットコインは生き残るが、適正価格は今の1/2から1/3と発言 |
2017年12月 | 20,000ドルに迫る | |
2018年6月 | 10,000ドル割れ | 買わない。5,000ドル割れなら買うと発言 |
2018年11月 | 4,000ドル割れ | 買わないといけないとの強迫観念を感じ、買った |
2020年11月 | 20,000ドル近く | |
現状 | 100,000ドル前後 |
「私はビットコインをあまり理解しておらず、すべての間違いを犯した。
頭に浮かんだかなり恣意的なものをアンカーにしてしまった。」
エラリアン氏は反省する一方、自身がビットコインに過度に否定的ではなかった点は正しかったと胸を張る。
「詐欺」(ジェイミー・ダイモン氏の意見)だとか、「明日消える」とは言わなかった点を強調した。
ただし、過度に肯定的でもないようだ。
「ビットコインは支払いのエコシステムの一部であり、そうあり続けるが、みんなが望むような世界の通貨にはならない。
金のようなコモディティであり、ポートフォリオにおいて5-10%まで増えるだろう。・・・
しかし、ドルにとって代わることはない。」
エラリアン氏はビットコインに対して排外的ではないが、世間で語られる過大広告を信じるわけでもないようだ。
むしろ本質的な主張は、過去の価格を将来の売買行動にどれだけ反映するかという点だろう。
敷衍すれば、テクニカル分析全体が不適切との考えに行きつきかねない問題提起だ。
インタビュワーは、話題をより広げ、投資や経営上の意思決定において、判断の前提をどう検証すべきか尋ねている。
かつて世界最大の債券ファンドPIMCOを率いたエラリアン氏は、かなり高いレベルの実践を求めている。
「私がみんなに言うのは『これが自分のメインシナリオだが、毎日データに対してメインシナリオを検証している』ということ。
・・・多くの人が、周囲の状況の変化を理解しないまま囚われている。・・・
大成功しているためにすべてがうまく行っていると信じ、十分に検証しなくなってしまう。」
エラリアン氏は珍しく、PIMCOの創業者にして債券王と呼ばれた、かつての同僚ビル・グロス氏について回想している。
「こうしたことは、PIMCOでビル・グロスが必要と言っていたことだ。
だから、いわゆる影の投資委員会が必要で、その役割とは実際の投資委員会をベンチマークすることだ。
年に一度は全社を日々の業務から離れさせ、3-5年先を展望させないといけない。」
エラリアン氏は、こうした活動の必要性をグロス氏から学んだという。
かつて債券王は様々な大きなテーマやレジームの変化を語り、市場参加者の心を揺さぶり、後に従えた。
その裏には、こんな活動があったのかもしれない。
(次ページ: 緊急と重要のマトリックス)