ゴールドマン・サックスのデービッド・コスティン氏が、トランプ関税の米国株へのインパクト、米市場の楽観の理由を話している。
EPSとバリュエーションを合わせた影響は5%程度だ。
コスティン氏がCNBCで、トランプ関税が実施・継続された場合のS&P 500への影響(株価下落)の試算を語った。
EPSとバリュエーションにそれぞれ2-3%程度の下押し圧力になるという。
おそらく多くの投資家は試算結果の小ささを意外に感じだのではないか。
この試算がどの程度正確かは評価が難しいが、1つ言えるのは、米市場の楽観がまだ続いているということだろう。
コスティン氏も、2年続いて20%台の上昇があったにも関わらず米市場の楽観が続いていると指摘している。
この楽観が米国例外主義によるものだとし、その源泉が企業の再投資率にあると述べている。
国外では企業のキャッシュフローの26%程度が事業に再投資されているが、米国では42%、特にマグニフィセント7では56%だ。
再投資率がはるかに高いとの考えが米国例外主義の源泉であり、世界中の投資家が米市場にこうも楽観的な理由だ。
近年、日本では東証が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求めて注目されたが、残念なことに上場企業でも投資コミュニティでもそれを株主還元と捉える向きが多かった。
本来なら、資本リスクを勘案した上で事業投資の機会を模索しなるべく大きく拡大再生産するのがほとんどの企業にとって使命であり理想の姿であるはずだ。
もちろん資本リスクを超える事業プロジェクトを見出すのは相当に困難なのだが、日本企業がこの攻めの活動を十分にできているかと言えば、大きな疑問符がつく。
日本ではバブル後、企業の投資が過小と思われたこともあり、政府が自ら投資活動に乗り出してしまった。
言うまでもなく政府は最も資本コストに鈍感な経済主体であり、その能力もない。
民間企業やその出身者を上手に使えばうまくいく場合もあろうが、逆に無駄遣いに終わったり食い物にされたと思われる事象も少なくない。
さらに、政府の産業への投資はクラウディング・アウトを引き起こし、政府支援がなければ生きられないゾンビ産業・企業を生み出す。
20世紀終わりは、計画経済の失敗が明らかになった時代であったはずだ。
米国も昔に比べればずいぶんと計画経済的な社会になった。
それでも数字に表れているように、米企業は相対的に再投資に前向きで、実際に高い再投資を実現できているのだ。