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ハワード・マークス 動く歩道は動いているか?:ハワード・マークス

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、短期的イベントに集中するあまり長期・趨勢的な変化を忘れてしまう危うさについて説いている。


「金利とは、魚に対する水のように私たちの環境を構成する。
金利は経済活動のスピードを決め、資産価格の価値を決める。」

マークス氏がiConnectionsのインタビューで、金利の重要性について前置きをした。
前置きをしたのには理由がある。
金利がいかに重要だからといって、あまり短期的な変動・変化を気にすべきではないと考えているのだ。

私はみなさんに短期的イベントをあまり気にかけないよう促したい。・・・
短期的イベント、短期のパフォーマンス、短期トレード、過剰な売買、ボラティリティは長期のファンダメンタル投資家には重要でない。

金利に限らず、市場は金融政策や高頻度データに右往左往しすぎるきらいがある。
次のFOMCや日銀政策決定会合で政策金利変更はあるのか、などメディアも何かにつけて取り上げたがる。
しかし、そうした情報は長期投資家にとってはほとんど意味のない情報だ。
長期投資では何年-何十年もの投資期間で時間的な分散を図っているから、高頻度データはほとんどがノイズでしかない。
本当に意味があるのは趨勢的な変化であり、それを日々のイベントから読み取るのは難しい。
(メディアがノイズを取り上げたがるのは、彼らの狙う視聴者層が(為替など)短期トレーダーであるからだろう。)

市場やメディアの短期志向について、マークス氏は2017年の経験を語っている。
この年、話すたびに聞かれたのが、何月にFRBは利上げを始めるか、だったという。
短期トレードとは無縁のマークス氏には興味のない質問だった。
同氏が重視するのは、長期的な政策、経済環境についてのもっと大きな絵の方にあるのだ。

「1980年以降に投資ビジネスに入った人はみんな、ここにいる人はほとんどそうだろうが、金利低下または/かつ超低金利しか経験していないだろう。
私は次の10年は金利低下・超低金利を特徴とする10年にはならないと信じている。
これこそ大きな変化なんだ。」

マークス氏は、趨勢的な金利低下が始まった1980年代初め以降進んだ世代交代をやや心配しているようだ。
超長期での金利低下局面とは、例えるなら「動く歩道」のようなものだったという。
この時代、すべてのロング投資家は直接・間接にその恩恵を受けてきたが、ゆっくりと動くコンベアーに気づかない人、忘れてしまう人も多いだろう。

「みんなが何か判断をし、企業が大儲けした2009-21年は本当に楽ちんな時代だった。
FF金利はほとんどの期間0-0.5%だった。・・・
(事業や投資の)決断をした人は『私の判断は優れている』というのかもしれないが、それは金利のおかげだ。」

マークス氏は、趨勢的な金利低下や低金利は終わったと考えている。
歩く歩道で言うなら、コンベアーは停止したか逆転を始めたのだ。

アインシュタインは『狂気』を《同じことを何度も繰り返し、異なる結果が起こると予想すること》と定義した。
もう1つの『狂気』の定義は、《まったく異なる環境で同じことをして、同じ結果が起こると予想すること》だろう。


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