ブリッジウォーター・アソシエイツのカレン・カーニオルタンブール氏が、米国株市場をマグニフィセント7、Mag7以外のテック株、それ以外の3つに分けて、株価に織り込まれている利益成長を計算している。
現在、市場の半分を占めるMag7とテック株に要求される利益成長は、残りの半分と比べて大きく異なっている。
カーニオルタンブール氏が投資家向けメールで書いている。
ほとんどの読者が《知ってた》と思ったのではないか。
もちろん、ほとんどの投資家が直感的に理解していた内容だろう。
では、もう少し分解して質問したらどうだろう。
- 過去10年間の利益成長
- 株価の正当化に必要な将来の利益成長
を比較してみたらどうだろう。
(もう少し正確に言うと、後者は《債券に対する通常の株式リスクプレミアムを実現するために今後必要とされる利益成長》である。)
カーニオルタンブール氏による計算結果は、直感とは少し異なるものだった.
過去10年 | 必要成長率 | |
Mag7 | 20% | 14% |
ほかテック株 | 4% | 13% |
その他 | 5% | 8% |
カーニオルタンブール氏は、この結果から強いメッセージを発信しようとはしていない。
ファクトを淡々と示している。
《自分で見て察しろ》と言いたいのだろう。
ここから読みとれるのは
- Mag7: 過去と比べて減速が許容される。
- ほかテック株: 過去と比べて大きな加速が必要。
- その他: 決して小さくない加速が必要。
もちろんMag7が要求される14%というのは相当に高い水準だ。
でも、過去との比較では「ほかテック株」の13%の方が可能性が低く感じられる。
また、過去5%成長だった「その他」が将来は8%になるというのも、なかなか信じがたいところがある。
これらを総合すると、巷でよく言われる《Mag7は高いが、それ以外はリズナブル》という議論が成り立たないように思われる。
これまでの直感的な理解はあてにならないかもしれない。
カーニオルタンブール氏は、銘柄の集中について歴史を紐解いている。
これほどのトップ7銘柄への集中は珍しいことではあるが、先例がないわけではない。
・・・トップ7へのこのレベルの集中が前回見られたのは1950-60年代、AT&T、GM、デュポンなどが最大の銘柄だった頃だ。
この時期、当時のメガキャップとより幅広い銘柄ともに株式リターンは強かった。
歴史的には、トップ7対S&P 500の残りで持続的な勝ち負けは見られない。
カーニオルタンブール氏は「銘柄集中は戦術的に強気シグナルまたは弱気シグナルではない」とも書いている。
さて、上表に戻ろう。
必要な14%、13%、8%の成長率はかなりハードルが高いように感じられる。
これが意味するのは何か。
2つの解釈を考えてみた。
- 将来、株価が停滞し、通常の株式リスクプレミアムが得られない。
- 必要な成長率は実現されるが、そのほとんどがインフレ率。
うーん。
どっちもパッとしない。