投資

アスワス・ダモダラン 【Wonkish】投資家から見れば大多数の企業は十分な利益を上げていない:アスワス・ダモダラン

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が定期的にアップデートしている世界の主要市場の上場会社約48,000社についての財務分析から、超過リターンを上げている企業の割合の話題を紹介する。


「会計規則どおりではなく、R&Dとリース(の費用)を(その国々で要求されない場合でも)資産計上し、私独自の利益と投下資本を計算した。
それぞれの企業について資本(株主資本)利益率を計算し、それを資本(株主資本)コストと比較し、それら企業の超過リターンを計測した。」

ダモダラン教授が自身のブログで、世界の上場企業が資本コストを上回るリターンを上げているか検証している。
リースの資産・負債計上は、オフバランス・リースをオンバランスに修正する、いわゆるコンストラクティブ・リース・キャピタリゼーションであり、一般的な手法だ。
R&Dについては意見が分かれるかもしれないが、先行投資としてのR&Dを繰り延べ資産計上する場合と同じ考えであり、投資に対するリターンをより重視したいという意図だろう。
ダモダラン教授による計算結果によると

全企業で注目すべきは、わずか約30%の企業しか資本コストを超過する資本リターンを上げていない。
サンプル中でマイナスの資本リターンを計上している赤字企業を除くと少し割合は改善するが、黒字企業全体でも約半分の企業は資本コスト未満のリターンしか上げていない。
株主資本(資本)コストを超過するリターンを上げる企業の割合はセクターごとに異なるものの、大多数の企業が超過リターンを上げるセクターは存在しない。

企業は黒字であればよいというわけではない。
投資家が投資した資金には機会費用(他の同等のリスクに投資した場合に得られるであろう利益)が存在し、それを超えるリターンを与えなければ合格点は与えられない。
この機会費用が資本コストであり、それを超えた場合に超過リターンが得られたことになる。

(東証の資本コストについての提言は、本来こう捉えられるべきだった。
しかし、市場関係者は、もっぱら投下資本を減らす、つまり安易に実現できる機会費用低減の方に注目した。
この提言については、理解する努力を今後も真摯に続ける必要があるだろう。)

(次ページ: ダモダラン教授が引き出した3つのインプリケーション)


 次のページ 

-投資
-

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。