ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏は、2022年初めに経済・市場が大きく変化を始めたと指摘し、今後の投資戦略について明かしている。
次に来る最も重要な局面は、経済が鈍化した時の予算上の利払い費にかかわる危機だ。
(政府)債務の利払い費はすでに3年前よりはるかに大きくなっている。
米国債の利払い費は3年前には3,000億ドルだったが、今では1.4兆ドルだ。
ガンドラック氏がトニー・ロビンス氏によるインタビューで、米政府の債務危機を予想した。
同氏は2016年当時を回想し、当時は皆が超低金利が永遠に続くと信じ込んでいたと話した。
しかし、現実には誰もが予想しないようなことが起こりうるという。
近年金利が上昇したのもそうだし、コロナ後にFRBが連邦準備法を逸脱し社債を購入したのそうだという。
ガンドラック氏は今後も予想しないようなことが起こるとし、一例として米国債クーポンのヘアカットを予想した。
また、逆に市民や州が連邦政府や法・ルールに従わなくなる傾向にも言及し、同様の風潮が過去に南北戦争につながったと述べた。
ガンドラック氏は2022年にある重要な変化が起こったと指摘している。
従来、金価格と実質金利との間には強い負の相関関係があったが、この相関に変化が起こったのだ。
「2022年初め以降、金利が大きく上昇し、実質金利が大きく上昇した。
これは相関から見て金価格を押し下げるはずだったが、そうはならなかった。
金価格は大きく上昇した。
2021年の終わりに多くの相関関係に変化が起こったんだろう。
経済が弱くなれば、金利は上昇し、債務管理に深刻な危機をもたらすだろう。」
ガンドラック氏は、最近の金価格上昇について中央銀行による買い入れが大きかったとし、その動機を「保険としての安全資産」だと解釈している。
人々が現体制に対して信頼しなくなったとし、今後も金は上昇を続けるだろうという。
通常なら景気後退期には政策金利だけでなく長めの金利も低下するものだが、次の景気後退では長めの金利はむしろ上昇するとガンドラック氏は予想する。
景気後退期には通常税収は減るから、政府の資金繰りは相当に厳しくなることになる。
厳しいのは米国債需給だけではない。
米政府には社会保障など未積立の負債もある。
「すべての負債を現時点の資金で支払おうとしてもそれは不可能だ。
米国には、そのための購買力、資産はない。
米国の金融資産は、未積立の負債より少ない。」
こうした厳しい状況はトランプ大統領も理解しているようだ。
積極財税派と見られていた大統領も、今では財政や長期金利を気にしているように見える。
ガンドラック氏は、イーロン・マスク氏の政府効率化省DOGEについて、危機を先延ばしする程度の効果しか得られないだろうと予想。
スコット・ベッセント財務長官の「3-3-3」政策(財政赤字対GDP比率3%、日量3百万バレルの原油増産、経済成長率3%)については、財政赤字と経済成長の目標が相いれないとの考えを示した。
財政赤字対GDP比率を7%から3%まで減らせば、経済成長率に及ぼす一次的影響は-4%となり、それを打ち消すのは不可能と思われるからだ。
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