ゴールドマン・サックスのリナ・トーマス氏が、金価格の上昇と今後について語っている。
金には興味がなくても参考になるところの多い話だ。
米国や西側諸国がロシア中銀の資産を凍結した2022年の話から始めないといけない。・・・
これは本当に多くの中央銀行、特にほとんどの外貨準備を米国債・ドル・ユーロにしている新興国市場の中銀にとって警鐘を鳴らした。
彼らは自国の外貨準備について『これは本当にリスクフリーなのか?』と自問した。
トーマス氏が自社ポッドキャストで語った。
凍結・没収の可能性がある金融資産を嫌い、各国中銀は金保有を5倍に急増させたという。
2022年からの利上げは金価格に下押し圧力を与えたはずだが、各国中銀の需要増がそれをはるかに上回ったという。
トーマス氏は、今年に入っての上昇について、政策・情勢の不確実性と説明する。
金は不確実性が高まった時、安全な逃避先として買われるためだ。
中央銀行の買いが続き、投機筋も金に一時避難しているのだという。
同氏は、まだ上昇が続くと見ているものの、短期的には調整を予想している。
関税で高まった不確実性が薄れる可能性があるためだ。
ゴールドマンによる2025年末の金価格目標は3,100ドル。
中央銀行による構造的な需要の高まりとFRB利下げを理由に挙げている。
ただし、構造的需要が高止まりし、投機的な買いが入るなら、年末3,300ドルもありうるという。
ゴールドマンでは、米ドル相場と金価格の両方について上昇を予想している。
一般的には、ドル高ではドル建て金価格は下落する傾向がある。
こうした傾向に反するように見える予想について、トーマス氏はいくつか理由を説明している。
- 中央銀行: 保有するドルで金を買うため、ドル高でも金購入を躊躇しない。
また、中国人民銀行は常に人民元に下落圧力がある時に金を買う。 - 金ETF: 金購入を後押しするのがドル相場ではなく金利。FRB利下げでもドル高予想が続いている。
- 関税: 安全資産であるドルと金の上昇要因に。
- 中国の利下げ観測: 中国人の金購入を後押し。
トーマス氏は購入者のスタイルに応じてアドバイスしている:
- 長期投資: 中央銀行にかかわる構造問題から長期的上昇を予想。
- 短期トレード: あまりよいエントリーのタイミングではない。
- ヘッジ: 金はよいヘッジ。「例えば、インフレリスクを含む米債務懸念が高まれば、金にはさらに5%のアップサイドが予想される。」
なるほど、説得力のある強気予想に聞こえる。
しかし、この世界優れた予想であっても当たるとは限らない。
ここで大切なのは、現在の金価格を支えているナラティブを正しく理解しておくことだろう。
それは金を含むもっと大きな市場にも通じる面があるはずだからだ。