オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、1月のMemoに関する対談を自社ポッドキャストで公表している。
いくつか注目の発言を紹介しよう。
もしも投資家がおかしくなる時期をバブルとするなら、なによりもそれは、実際に他の人がとんでもなく金持ちになるのを見ていて、おかしくなってしまうのだろう。
市場を安全で正気に保つ要素とはリスク回避だ。
市場サイクルやバブルについて行動ファイナンス的見地から議論してきたマークス氏は、リスク回避の姿勢が必要だと説いている。
ところが、しばしばリスクや損失への恐怖よりFOMO(チャンスを取逃す恐怖)が勝ってしまうのだという。
隣の芝生が青いのを見ておかしくなってしまうと、人々は合理性や価格の重要性を忘れてしまうという。
「『高すぎる価格などない』という話を聞いた時、明示的であれ暗示的であれ、私はそれを警戒信号と捉える。
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私は経験から、とてもよいがゆえに割高になりえない資産などなく、したがって危険だと考えている。
私は、これが投資業における数少ないルールの1つだと考えている。」
マークス氏が常に価格を重視するのには理由がある。
同氏の商売がディストレスト投資であるためだ。
投資対象はよいとはいえないモノ。
しかし、よいといえないモノでもその根源的価値より安いなら、投資の可能性が出てくる。
逆に、どんなによいモノでも、価格が合わなければよい投資にはならない。
マークス氏は、投資家がバブルに乗っかることの弊害を2つ挙げる:
- 高値掴み。破裂後の買い余力がなくなる。
- 心が折れる。自信を失う。破裂後も買うのが難しくなる。
オークツリーは自信を喪失した投資家の投げ売りの中からバーゲンを見つけるのが仕事なのだ。
マークス氏は長年にわたるバブルの観察から、バブルが何か新たなテーマとともに発生する傾向を指摘している。
「バブルはいつも何か新しいモノ、想像力を生み出し搔き立てるモノの近くで起こる。
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新しいモノのスリルとFOMOとは、信じられないほど強力な組み合わせだ。
私は職業人生で何度も見てきたし、それはなくならないだろう。」
今、市場ではAIについて過去の強気ナラティブを疑う人が増えている。
(次ページ: マークス氏が教えるバブルとの付き合い方)