ジェレミー・シーゲル教授は、米国株市場低迷がトランプ関税によるものと断言し、さらなる動揺もありうると暗示している。
1年先のインフレ期待が4.3%から4.9%へと過去最大の上昇となり、5-10年先のインフレ期待は3.4%から3.9%へこれも過去見てきた中で最大の上昇だった。
これらはすべて関税を予想したものだ。
シーゲル教授がウォートンビジネスラジオで14日発表のミシガン大学消費者心理指数についてコメントした。
トランプ関税は企業や消費者の様子見姿勢を生んでいるだけでなく、インフレ期待にも悪い影響を及ぼしているとの指摘だ。
最近のあまりよくないニュースにもかかわらず、シーゲル教授は今月18-19日のFOMCが無風で終わると予想している。
一方で、政策の変更がなくとも、公表されるドットプロット、特に利下げペースについては注目だという。
経済データや市場にはよくない材料が多いものの、その多くは予想に基づくものにとどまっている。
実績のデータに顕著な悪化が見られない中で、FRBは利下げを積極化しにくいと教授は考えている。
結果、ドットプロットの内容次第で、FRBがタカ派と受け取られる可能性があるという。
シーゲル教授が言いたいのは、それによってまた市場が下押しされうるとの可能性だろう。
シーゲル教授の関税批判は合理的かつ厳格だ。
トランプが姿勢を緩和し、報復関税の結果を見てみようと言うなら、それは市場にとってプラスだ。
しかし、彼が姿勢を緩めず、多くの関税を仕掛けるなら、上値は限定的になろう。
《永遠のブル》にしてはこれはかなり弱気な語り口と言えるだろう。
ただし、《永遠》の部分だけを取るならば、シーゲル教授の《ブル》は揺らいでいない。
長期保有者に対しては、たとえさらに10%下げて20%下落で弱気相場入りしたとしても、投げ売りしろとはいわない。・・・
さらに下げるかは完全に関税次第だと思う。
シーゲル教授がここまで関税犯人説を断言するのには理由がある。
他に実績面での理由が見当たらないためだ。
原油高でもなく、新たな戦争が始まったわけでもなく、ロシア/ウクライナ停戦が頓挫したわけでもなく、犯人は関税以外考えにくいという。
ただし、教授は冒頭、実績データへの警戒も語っている。
今後の企業業績など、実績のデータに悪化が見られれば、それもまた大きな弱気材料になっていくのだろう。
シーゲル教授は、市場の関心が関税に集まっている中、景気サイクルについても忘れていない。
バリュー株へのファクター・ローテーションの可否を、これまで景気・市場を牽引してきたAIとの関係で解説している。
「AIの問題は、AIがコモディティ化するか否かだ。
コモディティ化は利用者にとって好ましいことであり、バリュー企業の多くがその利用者になる。
それが片方のストーリー。
もう片方は、心理悪化が景気後退を引き起こすなら、それはバリュー株にとってよくない。」
現在のシーゲル教授のスタンスを強気と呼ぶか弱気と呼ぶかは定義の問題だろう。
1つ言えるのは、教授が予感する景気後退や弱気相場の確率が過去と比べるとずいぶんと上昇したということだろう。