ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏が、米資産の環境が悪化しているとして、政策にかかわるいくつかの要因を説明している。
目的が正しい政策でもよくない結果を生むものがありうることを示唆しており、根の深さが感じられる。
現状の米資産の値付けは、国際協調と制約を受けない政策決定者なくしては成立しえない。
その両方が危険にさらされている。
ジェンセン氏が26日の投資家宛てメールで書いている。
国際協調が失われ、政策が財政・インフレの制約を受ける中、高い資産価格の前提が失われているとの指摘だ。
同氏は「米資産をとりまく環境は極めて危険度を増している」とし、4つの理由を挙げている:
資本フロー、米企業の国外利益、財政再建、インフレ、である。
最後の2つは単純明快だ。
財政再建やインフレ退治を行えば、これら目的が(正しいにしても)経済・市場にとって逆風になるということ。
米企業の国外利益とは、米国が仕掛ける保護主義のつけが米企業の国外事業に跳ね返ってくること。
ジェンセン氏によれば、米国の世界における企業利益のシェアはGDPシェアと比べてはるかに大きいという。
(企業利益シェアは約4割なのに対し、GDPシェアは2割弱。)
同氏は、保護主義が世界のノーマルとなれば、諸外国がその状態を許容し続けるのをやめ、報復の対象にしてくるだろうという。
少しばかりわかりにくいのが資本フローだろう。
ジェンセン氏は、米政権の同盟国に対してさえ敵対的な通商政策に関連し、米国の抱えるジレンマを指摘している。
米資産価格は、大きな資本流入なくしては支えられない。
米株式市場の時価総額を諸外国との比で維持するには、世界の株式に投資される金額の70%が米国株市場に投じられなければならない。
貿易赤字を減らし、主要な米国の同盟国との通商面での緊張を高めれば、このシステムが危険にさらされる。
米国が貿易赤字とは、諸外国全体で見て米国に対してネットで輸出が輸入より多いことだ。
つまり、諸外国は米国から純輸出の代金、ドルを受け取ることになる。
特にインフレのご時世にはこのドルをどこかに投資しておかないといけない。
結果(回り回って)米資産が買われることになる。
この「システム」が米資産価格を支える重要な要因になっている。
米国が貿易収支を均衡させる方向に努力すれば、このシステムは縮小する。
世界最大の対外債務国である米国は、このフローの縮小に耐えられるか、と問われているのである。
この危うさは、反対側にも存在する。
世界最大の対外債権国にして、世界最大の米国債保有国(FRBを除く)は日本。
日本が米資産を売ると見られれば、米資産価格に下押し圧力となり、みずから損失を招く可能性もある。
もちろん、日本以外が売り始めても、日本には逆風になる。