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【短信】関税より債務問題:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、先日のSNS投稿に関連してCNBCに出演、トランプ関税についてコメントしている。


(関税は)米企業にとってコストを増やし売上を減らし、資本調達が難しくなる。

ダリオ氏がCNBCで、関税が企業に及ぼす影響を端的に解説した。
同氏は、トランプ政権の貿易不均衡についての問題意識に賛同するとしつつ、その解決策の実効性に疑問を呈している。
関税が米企業だけでなく「世界中の生産活動を阻害してしまう」と心配した。
すでに世界の分断で傷ついてきたサプライチェーンがさらに傷を深めるとの考えだ。

ダリオ氏は、米国には自給自足を実現する上で構造問題が存在すると指摘した。
同氏が挙げたのは人的資源の現実だ。

  • 1%は、信じられないほど優秀で、その半分が外国人。高い教育を受けユニコーン企業を生み出す。
  • 10%は、上位1%とともによい仕事をする。
  • 60%は、小学校6年生の読解力より低い水準で、生産性が上がりにくい。

米国が必要とするものを米国内で生産するのは「極めて難しい」とダリオ氏は結論した。

もっとも、仮に人的資源が満たされても、米国が貿易均衡まで生産を増やすと考えるのは現実的ではないだろう。
ダリオ氏は状況の困難さをずいぶんと厚いオブラートにくるんでいるように聞こえる。

ダリオ氏は、貿易不均衡が長期的課題であるのを認めつつ、同時により重大で困難な財政問題が存在すると強調する。
同氏は従前から、米国の財政赤字をGDP比3%以下に減らすよう提案してきた。

「米国は債務(問題)を避けては通れない。
政府支出が大きすぎる。
その時に(貿易での)競争力の課題もある。
これは歴史を通して繰り返してきたことであり、今は1930年代と似ている。」

ダリオ氏は、米国でインフレが急騰し始めた2021年5月、当時が1930-45年とよく似ていると述べていた。
この時の類推によれば、現在は1933年フランクリン・ルーズベルトの就任後といった印象だ。
(興味深いのは、トランプ関税が、その前のフーバー政権下のホーリー・スムート関税を想起させる点だ。
トランプ大統領は、ひとつ間違えると、ルーズベルトからフーバーに先祖返りする、つまり復活から逆に遠のきかねない行動をとっているのかもしれない。)
ちなみに、1935年以降インフレと金利は落ち着きを取り戻し、リスク資産は1937年まで上昇するが、その後下落。
1937年の高値を回復するのは戦後になってからになる。


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