アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、トランプ関税の背景にある考えと政権の本気度について淡々と語っている。
これは揺れの初期のように思える。
過去の危機を思い起こすと、最初のショックが最後のショックとは限らず、今日のような余震がある。
ダモダラン教授が8日CNBCで、トランプ関税に端を発した市場の混乱はまだ終わらないと予想した。
教授によれば、これは市場による「過剰反応」や「パニック売り」ではないという。
トランプ関税は「世界経済を長期間変える可能性があり」、その変化を織り込もうと市場が「株式の値下げ」を実行しているのだという。
「これは、世界経済のパイの大きさと誰がどれだけ取るかの両方を変えうる。
これが、他の危機より予想が難しい一因だ。」
キャスターは、関税によってEPSもPERも下がらざるをえないのではないかと尋ねている。
ダモダラン教授はもう少し大きなスコープで、資本分配率に言及した。
「ホワイトハウスの想定する最終局面では、株式市場ではなく株式市場以外の取り分が重視されているようだ。
過去40年間、全体のパイに占める株式投資家の取り分はどんどん拡大した。」
従来の米国は株主資本主義の牙城とされ、過去数十年にわたって資本への分配を拡大させてきた。
(近年ようやく上げどまっている。)
こうした風潮の中で、米政府は危機の度に「市場の鎮静化を図りもっぱら恐怖を鎮めようとしてきた」とダモダラン教授は振り返る。
今回は米政府もFRBもそうした動きを見せていない。
教授は、政府が方向を転換し、工場労働者のパイを増やそうとしていると推測する。
ただし、いつもの通り冷静に、その実効性については疑問も呈している。
「世界の貿易が困難になっていくなら、世界経済全体のパイは小さくなり、その市場での最大のプレーヤーである米国のパイも小さくなる。
・・・
この過程が終わった後、誰かのパイが今より増えると私には確信できないが、ホワイトハウスはそうは思わないようだ。」
ダモダラン教授は、ホワイトハウスの政策の是非はともかく、この政策が市場参加者にとっては「問題」であることを認めている。
トランプ関税については多くの人がその目的については同意している。
そして政権は自信を深め、使命感に燃えている。
それだけに、市場参加者にとっての「問題」は容易には解決しそうもない。