ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、従前からの危機感をさらに強めている。
誘導尋問のようなインタビューではあるが、終末論に近いニュアンスを口にしている。
今私たちは分岐点にいる。
ダリオ氏がNBCで、米国と世界がおかれた状況に危機感を強めている。
同氏は、関税に端を発した景気後退懸念よりもっと重要な問題があるとの考えだ。
貨幣の価値、国内対立、国際対立など、より大局的な問題を重視すべきという。
貨幣の価値の問題は米財政赤字の問題だ。
ダリオ氏は、米財政赤字をGDPの3%以下に下げないと、米国債の需給問題に直面し、「通常の景気後退より悪い」景気後退になると心配する。
背景には、これが世界の通貨システムの変遷に発展しうるからだ。
同氏は、1945年の終戦以降に開始した「通貨の秩序、地政学的秩序」が終わりうると考えている。
ダリオ氏によれば、こうしたサイクル(1つの秩序の終焉と新たな秩序の開始・進行)は歴史上何度も繰り返されてきた。
私が恐れるのは、そうした秩序が崩壊すること。
特に、崩壊が必要でないのにそうなることだ。
サイクルが繰り返されるのを歴史の必然と達観するにせよ、まだやれることがあるはずなのに現在のサイクル・秩序を諦めるべきではないとの思いがあるのだろう。
ダリオ氏は、この分岐点で正しい選択肢を選ぶための要点を挙げている:
- 米財政赤字: GDPの3%以下に。1991-98年のように超党派で。
- 国際関係: 米国の力を用いつつ、うまく交渉し、対立・混乱を避ける。
ダリオ氏は、何もしなければ、米財政赤字はGDPの7%になると見ている。
財政収支を対GDP比4%ポイント改善するのは相当な大仕事だし、積極財政を求める風潮も逆風だろう。
実現は望み薄に見える。
しかし、同氏は、これを実現しないとニクソン・ショックやリーマン危機の再来になりかねないと警告する。
需給問題ほかで富の保蔵手段が危うくなれば、貨幣的インフレと大混乱の状態になる。
1971年の通貨システム崩壊や2008年のようになるかもしれない。
とても厳しく、他のことが同時に起これば、これらよりも厳しいものになるかもしれない。
1971年のニクソン・ショックは、通貨制度と市場の関係について若いダリオ氏を覚醒させた出来事。
2008年のリーマン危機は、No.1ヘッジファンド運用者としての地位を確立することになったイベントだ。