ロバート・シラー教授が連名で足元のCAPEレシオとコロナ・ショックの影響についての論文を公表している。
学術的な面は別として、興味深いのは世界の主要市場のMSCIごとに次の2つの数値を計算している点だ。
- 「超過CAPE利回り」: CAPEベースの益回りの10年債実質利回りに対するイールド・スプレッド
- 「CAPEに基づく期待リターン予想」: コロナ前とコロナ後の変化(期待と予想が両方ついていて少し奇妙だ。)
実証面に徹し驚くほど読みやすい論文(実際はバークレイズの販促資料)だから、読者自身で読まれるとよい。
どれぐらい読みやすいかといえば、この論文には、経済学者が危うい議論を持ち出す時に好む微分・積分が一度も出てこない。
以下、一部を紹介しよう。
- 日本のCAPEは20.6倍。
1981年以降の平均は42倍だが、バブル期を考慮するとメジアン38.4倍の方が意味があるかも。
歴史的低水準で、40年来で最低。 - 超過CAPE利回り: 日本6%弱、米国5%弱、欧州6%弱、中国5%弱
日本はバブル期から上昇傾向で、リーマン危機後一層上昇。 - 実質リターン予想:
- 米国: コロナ・ショックでリターン予想は低下し、イールド・スプレッド予想は上昇。
コロナ後の10年リターン予想は3%超。 - 欧州: ほとんど変化なし。
10年リターン予想は5%超。 - 日本: ほとんど変化なし。
10年リターン予想は6%超。
2年だと14%、5年だと14%超。
- 米国: コロナ・ショックでリターン予想は低下し、イールド・スプレッド予想は上昇。
論文では、高いCAPEあるいはCAPEの上昇に最近の超低金利が影響しているとし、各種イールド・スプレッドに注目する意義を説明している。
超過CAPE利回り、株式リターン予想、対債券での超過株式リターン予想は、なぜ投資家が当初のパンデミック急落の後に株式に向かったのかを説明する助けになるかもしれない。
CAPEレシオと低水準の金利の間の極端な差は、決定的に投資家の選好を株式に向かわせ、これら3つの指標はすべてこの影響を明示している。
ちなみにCAPEによる株式リターンの予想法の強度として、論文では予想リターンと実際のリターンの相関関係を提示している。
R2乗の平均が約70%なのだという。
相関が認められるのは間違いないが(タイミングを含めて)精緻なものではないことを留意すべきだろう。