ジェレミー・シーゲル教授は、今週初め市場を脅かしたDeepSeekによるAIのニュースが経済・市場にとって好材料と話している。
何であれ、モノを安くするものは米経済、世界経済、ユーザーにとってよいものだ。
シーゲル教授がウォートンビジネスラジオで、DeepSeekや今後現れるかもしれない価格競争力のあるAI企業についてコメントした。
ちなみに同日のCNBC出演では「米市場全体にとってよい」とも話していた。
経済全体、市場全体にとってよいかどうかは少々眉に唾を付けて聞いた方がいいかもしれない。
特にGDPや時価総額などの数字は、安価な製品・サービスの登場で一時縮小することがままある。
過去にも技術革新が失業やデフレを生んだ例もある(産業革命からしてそうだった)。
今回もDeepSeek等の参入が既存のプレーヤーの驚異的な利益率・成長率を削り取るようなら、経済・市場の数字が一時的に悪化する可能性も覚悟すべきだろう。
もちろん、長期的に見たり、人々の実質的な社会厚生を見たりするなら「よいもの」と期待できるのだろう。
しかし、今投資家の多くが心配しているのは《一時的》な悪化が起こるかどうかだ。
シーゲル教授はDeepSeekの及ぼす影響に濃淡がある点は認めている。
たとえば、NVIDIA等ハイエンド側生産者が打撃を受ける一方、ローエンド側のチップメーカー等やユーザー側は恩恵を受けるとした。
さらに、この濃淡がセクター/ファクター・ローテーションを引き起こす可能性にも触れている。
「これがナラティブをグロース株からバリュー株へシフトさせる可能性がある。
このシフトは選択的に起こるため、強烈なものとはならないだろう。」
シーゲル教授は先週までマグニフィセント7、大手テック株、AI関連株などのナラティブがまだ継続していると話していたが、そのナラティブが真価を問われ始めている。
ただし、これらモメンタムを得ていた銘柄群の中にはAI生産者側でなくAIユーザー側の企業も多いため、そうした銘柄群はむしろ恩恵を受けるという。
全体のローテーションについてあまり高い確度でないと自覚しているため「Maybe」(もしかしたら)と断りを入れている。
米金融政策について、シーゲル教授は、経済データが引き続き「過熱のない」よい状況にあるとし、従前の見方を継続している。
「今年の利下げは、よほど悪い展開がない限り1-2回だろう」という。
関税がトランプ経済政策の中で唯一のマイナス材料だと考えるシーゲル教授だが、現時点ではまだ交渉材料に尽きず、常に導入開始まで「和解」の可能性があると話した。
また、仮にすべての関税が導入された場合の試算でも、物価への影響は「一回の0.50-0.75%上昇」に過ぎないという。
総需要の問題による継続的な物価上昇でないこと、ドル高で相殺されうることから、教授は関税が金融引き締めにつながらない可能性を指摘している。
「市場が関税を好まないことは間違いない。
脅しがある度に市場は下げるだろう。・・・
トランプは関税が経済にとってよいと考えるかもしれないが、市場は全体としてよいとは考えない。
そして、トランプは市場を気にしている。」