こんな厳しい言葉ばかりを聞いていると、あまりにも反AI的と思われるだろうが、決してそうではない。
ダモダラン教授が《バリュエーション学長》と呼ばれるのは、終始一貫して論理的・定量的にモノを扱う点にある。
教授は今回もきちんとNVIDIA株について価値評価を行っている。
ダモダラン教授が前回NVIDIA株評価を公表したのが昨年9月。
今回との比較はこうだ:
2024年9月 | 2025年1月 | |
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(前提) | ||
2035年チップ市場規模 | 5,000億ドル | 3,000億ドル |
市場シェア | 60% | 60% |
営業利益率 | 60% | 60% |
資本コスト | 10.52%→8.49% | 11.79%→8.50% |
(結果) | ||
1株あたりの価値 | 87ドル | 78ドル |
市場株価(評価時) | 109ドル | 123ドル |
結果は1株あたり78ドルの価値。
市場株価の割高度合いは拡大したものの、価値としては前回より1割強しか下がっていない。
要因は、変更した前提から明らか。
チップ市場の予想を下げ、資本コストを引き上げた点だ。
こうした前提の置き方にダモダラン教授のうまさが感じられる。
安価なプレーヤーによって市場が浸食・縮小されると考えているが、NVIDIAのシェアや利益率は動かしていない。
同社が対象とするハイエンド市場がある程度棲み分けで生き残るとの予想、数量ベースでシェアが浸食されても金額ベースではハイエンド製品のシェアが高止まりするとの予想、棲み分けの結果NVIDIAの利益率がさほど下がらないとの予想を反映しているのだろう。
(筆者は少し利益率予想の部分が甘い気がするが・・・)
割高度合いは前回の25%から今回57%に拡大している。
これをどう咀嚼するかは読者の判断に任せよう。